筆者は、アップルがE-Bookで30%のシェアを達成することは相当に困難であるし、そもそもそれがアップルの戦略でさえないと考えている。iPadで小説を読みたい消費者がどのくらいいるだろうか。ページを連続的に追う以外の読み方がないフィクションでは、E-Bookの取り柄は安いこと、スペースをとらないこと以外にない。後者だけならヘビーな読者以外は用がないだろう。そんなものはアップルにとっても大した市場ではない。むしろE-Bookのシェア変化は、様々な付加価値と特徴を持った電子書店によってもたらされる可能性が強い。
アップルが向いているのはゲーム+ブックなどのダイナミックコンテンツであると推定する理由は十分にある。アップルは新市場を創造するために、出版社との良好な関係をつくることに成功した。ブック+ゲーム、ブック+ビデオ、ブック+オーディオ、ブック+テキスト、あるいは「ブック+X」。出版社の想像力と創造力が十分に届かないこれらの分野は、次世代のコンテンツビジネスのほんとうの市場といえる。出版社が気づいていないのは、出版社が持っている最大の資産は「コンテンツ」などではなく著者と読者をユーザーとする「知のプラットフォーム」だということだろう。これは主として出版人の頭の中にある仮想的なものだが、これがあるからこそ、社会的・商業的に意味のある出版活動ができるのだ。音楽産業は「音楽」をコンテンツに最適化(矮小化)したことで自ら罠にはまった。
出版社は、少なくとも300年にわたって、この「知のプラットフォーム」を構築し、育ててきた。これをデジタルに再構築したものが、次世代のコンテンツ=サービスをリードする。既存の出版社にはまだいくらか時間が残されていると思うが、アップルやアマゾンは待ってくれない。信じられないかもしれないが、彼らが次にやろうとしているのは、ゲームビジネスのモデルを使ったコンテンツ産業の育成であると思う。既存の出版社は、それらに対して素材を提供するに止まるか、あるいは自らも参加するか、それとも消え去るかという3つのうちから選択できる。
— アマゾンのシェア「急落」予想の無意味 : EBook2.0 Forum (via syoichi) (via yaruo)